2025年度活動報告書のAIによるハイライト

2026.01.13

2025年 関西設計管理研究会 活動レポート:AI・DXが拓く、ものづくりの未来

1. はじめに:激動の時代における関西設計管理研究会の役割

本レポートは、2025年度に関西設計管理研究会(KEAC: Kansai Engineering Administration Committee)で繰り広げられた活発な議論と活動のハイライトをまとめたものです。特に、現代の製造業が直面する大きな潮流であるAI(人工知能)DX(デジタルトランスフォーメーション)、そして3D-CADの活用を軸に、その最前線を紐解いていきます。

関西設計管理研究会(KEAC)は、昭和36年7月(1961年7月)に発足して以来、関西のものづくり企業が互いに知見を交換し、産業の発展に寄与してきた歴史ある情報交換の場です。

垂水伸輔会長が語るように、2025年は製造業にとってまさに激動の一年でした。その環境は、以下の3つのポイントに集約されます。

  • 技術革新の加速: AIや量子技術の社会実装が本格化し、従来の産業構造そのものが大きく揺さぶられました。
  • 地政学的リスクの高まり: 経済安全保障の観点から、グローバルなサプライチェーンの再構築がすべての企業にとって急務となりました。
  • 国策としてのデジタル化・グリーン化: 政府が主導するDX・GX(グリーントランスフォーメーション)政策のもと、日本の製造業は効率化の追求だけでなく、新たな価値創造への挑戦を続けています。

本レポートでは、こうした時代背景の中でKEACがどのような議論を重ね、未来への活路を見出そうとしたのか、具体的な活動内容を通じて探っていきます。

2. 2025年の主要テーマ①:AIは「効率化の道具」から「創造性のパートナー」へ

2025年のKEAC例会では、AIがもはや単なる業務効率化ツールではなく、人間の創造性を拡張し、新たな価値を生み出す「パートナー」として位置づけられていることが鮮明になりました。その具体的な議論と事例を3つの視点から見ていきましょう。

  • アイデア創出の起爆剤として 株式会社日南の猿渡義市氏(第519回例会)は、AIを活用した驚くべきデザイン創出事例を紹介しました。無数のアイデアを高速で生成する「AIガチャ」を用いて、これまでにない乗り物のデザインを生み出したり、全く新しいラーメンのレシピを開発したりと、その応用範囲は無限大です。さらに、地方創生プロジェクトでは、AIに仮想の参加者を生成させて多角的な議論を促すなど、社会課題の解決にも貢献しています。この講演で一貫して強調されたのは、AIの能力を最大限に引き出すためには、人間からの明確なビジョンと「何を達成したいのか」という質の高い「問い」が不可欠であるという核心的なメッセージでした。
  • 多様な業務への応用 AIの活躍の場は、設計部門に留まりません。第520回例会のフリーディスカッションでは、参加者から多様なアイデアが共有されました。例えば、コールセンター業務における顧客対応の自動化やFAQの自動生成、営業活動における顧客ニーズの予測分析など、企業のあらゆる部門でAIが貢献できる可能性が示されました。
  • 未来の設計プロセスへの期待 クリエイティブマシン株式会社の芳賀卓也氏(第524回例会)は、さらに未来を見据えた提言を行いました。氏によれば、5〜10年以内にはAIが複雑な機構設計を自動で担う時代が到来するとのことです。この未来像は、設計者が単純作業から解放され、よりコンセプト創出や問題解決といった本質的に創造的な作業に集中できるようになるという、非常に前向きな展望を私たちに示してくれました。

AIの可能性が議論される一方で、KEACの議論は常に「そのAIに何を与え、どう活かすのか」という現実的な課題に立ち返りました。その答えこそが、2025年のもう一つの柱であるDXの推進です。

3. 2025年の主要テーマ②:DX(デジタルトランスフォーメーション)による設計・製造プロセスの革新

2025年の活動を通じて明らかになったのは、DXが単なる最新ツールの導入ではなく、設計から製造、そして顧客への価値提供に至るまでのプロセス全体を根本から変革する取り組みであるということです。ここでは、具体的な3つの事例からその核心に迫ります。

3.1 過去の資産を蘇らせるデータ活用

多くの製造業が抱える「過去の図面を探すのに膨大な時間がかかる」という課題。この問題を解決するヒントとして、日経BPの木崎健太郎氏が紹介したのが富士油圧精機の事例です(第521回例会)。

同社は類似図面検索システム「CADDi Drawer」を導入し、過去の膨大な図面データをデジタル資産として蘇らせました。これにより、設計の重複を避け、見積もり精度を向上させるなど、劇的な作業効率の改善を実現しました。この取り組みを徹底するため、「過去図面の再発行を禁止する」という社内ルールを正式に定めたエピソードは、単なるツール導入に終わらない、DXをやり遂げるという強い意志を象徴しています。

3.2 シミュレーション技術(CAE)の浸透

CAE(Computer-Aided Engineering)は、コンピュータ上で製品の性能や挙動を事前に検証するシミュレーション技術です。これにより、物理的な試作品を作る回数を大幅に減らし、開発期間の短縮とコスト削減に大きく貢献します。

パナソニック株式会社の松本大世氏(第523回例会)は、冷蔵庫開発における発泡ウレタンの充填プロセスにCAEを導入した事例を発表しました。この事例は、従来は試作品での検証が不可欠だった複雑な物理現象をデジタル上で解明し、開発の上流段階で品質を造り込むアプローチが、コストや期間短縮に直結することを示しました。

3.3 設計と製造を繋ぐBOMとPDM

製品がどのような部品で構成されているかを示す一覧表がBOM(部品表)、そして図面や仕様書などの製品データを一元管理する仕組みが**PDM(製品データ管理)**です。これらは、設計部門と製造部門のスムーズな情報連携を実現し、DXを推進する上で極めて重要な役割を担います。

2025年の例会では、このBOM/PDMを巡るリアルな課題と解決策が共有されました。

  • 課題:設計と製造の断絶 日揮ホールディングス株式会社の佐藤知一氏(第523回例会)は、多くの企業が直面する「設計BOM(E-BOM)」と「製造BOM(M-BOM)」の乖離問題を指摘しました。設計部門と製造部門で情報が分断されることで、手戻りや生産効率の低下が発生します。
  • 解決策と効果:データの一元管理 TOA株式会社の弟子丸泰一氏(第525回例会)は、PDM導入によってこの課題を克服した事例を発表しました。導入前は「最新のデータがどれか分からない」「図面検索に時間がかかる」といった問題に悩まされていましたが、データの一元管理と明確な運用ルールを整備することで、業務効率を大幅に改善することに成功しました。

このBOM/PDMの課題は、第4章で紹介するDMG森精機が、独企業との統合後にわずか1年半でシステム統一を成し遂げた事例の重要性を際立たせます。

BOMやCAEを巡る議論は、ツールの導入だけではDXが完結しないことを示唆しています。真の変革は現場で起きるのか。その答えを探るべく、我々は3社の最先端工場へと足を運びました。

4. 現場から学ぶ最前線:工場見学で見た「ものづくりの今」

2025年は、最先端の製造現場を体感する貴重な工場見学が3回実施されました。デジタル技術が現場でいかに実践され、変革を駆動しているか、そのエッセンスを以下の表にまとめます。

会社名 核となる
コンセプト
具体的な取り組みと成果
DMG森精機株式会社
(第522回例会)
デジタル技術を軸とした世界規模での変革 ・独企業との経営統合後、1年半でCADやBOMのシステムを統一。
・3Dモデルを活用して紙図面を廃止し、組立DXを推進。
・仮想空間で試作を行う「デジタルツイン」で精度とスピードを両立。
HILLTOP株式会社
(第524回例会)
「超多品種少量生産」を支える職人技のデジタル化 ・熟練技術を「オペレーションリスト」として数値化し、約85%を占める文系出身者でも最適なプログラムを作成可能に。
・24時間無人稼働を実現するバーチャルシミュレーション。
・膨大なデータを活用し、AIがプログラムを自動生成する「AIキャノン」を開発中。この野心的なプロジェクトは、AIを単なる効率化ツールから自律的な価値創造のエンジンへと昇華させる、本研究会で議論された潮流をまさに体現するものです。
髙橋金属株式会社
(第525回例会)
顧客ニーズとブランド価値を両立する設計思想 ・高品質とコスト削減を両立するため、3D CADに加え、構造・流体など幅広い解析技術を積極的に学習。
・最先端設備を活用し、鈑金・パイプ・プレスなど多様な加工分野で実績を構築。

最先端の現場から得た刺激は、研究会の議論をさらに深化させ、次なる一年への展望へと繋がっていきます。

5. まとめと2026年への展望:「設計力の抜本的強化」に向けて

2025年の関西設計管理研究会の活動を振り返ると、未来のものづくりに向けた3つの重要な学びが浮かび上がります。

  1. AIは、単なる効率化ツールではなく、人間の**創造性を引き出す「パートナー」**としての大きな可能性を秘めていること。
  2. DXの成功は、個別のツール導入に留まらず、データとプロセスを繋ぐ**「全体最適」の視点**が鍵であること。
  3. 最先端技術は、DMG森精機やHILLTOPの事例が示すように、現場の運用プロセスと一体化し、職人技をデジタル資産に変えることで初めて持続的な競争優位性となること。

これらの学びを踏まえ、垂水会長は2026年に向けた最優先方針として**「設計力の抜本的強化」**を掲げました。これは、予測不能な時代を乗り越え、未来を自ら創り出すための中心的なテーマです。

この方針を実現するため、KEACでは以下の4つの分野に重点的に取り組みます。

  • 設計手法: AI活用を見据えたデジタル設計プロセスの再構築
  • 組織の在り方: 迅速な意思決定を可能にする組織構造への変革
  • 人材育成: 専門性と主体性を兼ね備えた未来人財の育成
  • データ管理: 設計資産を最大限に活かすデータ管理・利活用方法の確立

関西設計管理研究会は、これからも各社が持つ知見や成功体験を共有し合う**「GIVE & TAKE」の精神に基づいた「実践知の結集プラットフォーム」**としての役割を担い、関西から日本の、そして世界のモノづくりの未来に貢献していきます。